観覧車:物の気持ち

写真と一緒に

観覧車

ツイン観覧車 最終営業日
ぼくは、ここで生まれ、ここで生きてきた。
44年間、この場所で、たくさんの人たちを乗せて回り続けてきた。
カップル、家族、友達同士……みんなの笑顔と一緒に、ぼくはいつも空を見ていた。

だけど、今日が最後の日。
ぼくが回るのは、今日でおしまい。
後ろでは、もう新しい観覧車が回り始めている。
ピカピカのフレーム、最新のゴンドラ、楽しそうな歓声……。
あぁ、ぼくはもう、役目を終えるんだな……。

でも、泣いてる場合じゃない。
今日一日、ぼくは後悔しないように頑張らなきゃいけない。
だって、たくさんの人が、お別れを言いに来てくれたんだから。

ぼくのゴンドラたちには、お客さんが書いてくれたメッセージがびっしり。
「今までありがとう!」
「初デートで乗りました!」
「家族と何度も来たよ!」
「またどこかで会おうね!」

ありがとう。
本当に、本当にありがとう。
こんなに愛されていたなんて、ぼくは幸せすぎる。

さぁ、最後の運行。
ぼくはいつも通り、ゆっくりと空をめぐる。
この景色を、心に焼きつけながら——。
解体して外された観覧車のゴンドラ
遂に、この時が来てしまった。
もう、お客さんを乗せることはできない。
ぼくはゆっくりと解体され、少しずつ姿を変えていく。

ゴンドラが一つ、また一つと外され、地面に降ろされていく。
カラフルな姿のまま残された3つのゴンドラ……
記念に残してくれるのかな?
みんなの思い出の一部として、どこかに飾られるのかな?
それとも、いつか別の形で使われるのかな?

そうだったら嬉しいな。
ここで過ごした44年間が、ただの思い出じゃなく、
形としても残るのなら、それほど誇らしいことはない。

他のゴンドラはどうなるんだろう?
もしもどこかに置かれるなら、たくさんの人に会えるといいな。
「昔、この観覧車に乗ったなぁ」って、みんなが懐かしんでくれると嬉しい。
観覧車の解体も終盤
ぼくの体も、もう残りわずかになってしまった。
ゴンドラは全て降ろされ、骨組みもどんどん取り外されていく。
あんなに大きかったぼくが、こんなに小さくなっていくなんて。

……だけど、不思議と悲しくない。
ぼくは、ただ消えてなくなるわけじゃない。
この体はバラバラになり、新たな鉄として生まれ変わる。

もしかしたら、次は別の観覧車になるかもしれない。
もしかしたら、ジェットコースターのレールになるかもしれない。
あるいは、全然違うものに生まれ変わるかもしれないけど、
それでも、ぼくはまた誰かを楽しませる存在になれるはず。

だから、みんな、さようなら。
今までありがとう。
ぼくのことを覚えていてくれたら、それだけで十分幸せだよ。

また違う遊具の鉄になって、みんなと会えることを願ってる。
それじゃあ、またね。